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芸術について

September 26, 2019

この国で芸術が希少なものとなり、アートと呼ばれるものが蔓延るようになって久しい。我の排泄物で塗りたくられたものばかりで、一言で言えば「見て見て、かまって!」と我を押し付けるもので溢れ、うんざりすることがよくある。

 

そもそも芸術というものは「塗ること」ではなく「剥がすこと」ではなかっただろうか。少なくとも芸術というのは手段であり、「不条理」と向き合いそれを克服する過程から生み出されてきたものだったはず。

 

なぜ繕わなければならないのか・・
なぜ迎合しなければならないのか・・
なぜ押し付けなければならないのか・・

 

そういったことひとつひとつ向き合うことで、剥がれ落ちていくものが作品とよばれるべきだと思うし、また、そうして抜け殻として剥がれ落ちることで、人は誰しも生まれ変わっていくものではなかったろうか。

 

しかれども、世の中にはやりきれないことが溢れている。
労働、不正、暴力、災害、病、死・・

 

"To be, or not to be?" ハムレットの一節にもあるように、生きていくことは目の前に立ちはだかる困難と向き合うか、目を逸らすかの二択しかない。応じるか、転嫁するか。ところが、大半の人は後者を選ぶ、否、選ばされてしまうのだろうと思う、おそらくほとんど盲目的に。

 

それはこの国が「消費」大国となってしまったことと無関係ではないと思う。そうした風土がアートと呼ばれるものが蔓延る温床となってしまっているのではないだろうか。

 

おそらくいつの間にやら人々は「サービス」が提供されること、「与えてもらうのが当たり前」と思うようになり、苦難を棚上げさせることが暗黙のうちに社会常識とされる状況に置かれてしまった。
痛かったら薬、払えなかったらローン、災害は政治のせい、老いや病は先送り、死はひたすら延命、不安と恐怖、不安と恐怖、年金、保険、はてしない残業・・

 

商品というのは「量」であるから、どうしても質は排除され創造性は否定される。つまり、集客という行為によってたった1人の眼を開いた者よりも99人の盲目の嗜好を優先せざるを得ない。そうして多数の「消費者」が温室の中でシチューのように溶かされる。

 

現実は虚飾という名のオブラートに包まれタブーとなり、過保護は過剰な自己愛を生み、他者の価値を決して認めない不寛容を助長する。不寛容は他人の足を引っ張ることに執心し、気に障ることは憂さ晴らしに炎上させる、みんなと一緒じゃないと何も言えない。コンビニのおにぎりのように模倣品を作ってはすぐ廃れ、毒にも薬にもならないもので溢れかえっている。

 

見栄への迎合、刷り込まれた価値観、テレビ、芸能人、ブランド、イイネ、イイネ

 

そうして、感性は鈍り、自分で判断できない人間が量産される。見えない力によって動かされ、働かされ、生命の時間が削られていくことに疑いを持つことさえできない。

 

死があるから、目を背ける
苦しいから、楽な道を選ぶ
不自由だから、仕方ない

 

血、涙、情熱、昭和の息吹さえもう遠い昔の記憶になってしまった昨今、街の外れに苔にまみれたおじぞうさんがひっそり佇んでいることがある。作者が不明となっても、形はいびつで拙くても、何年もそこに生き続けているのはどういうわけだろうか。
切実な祈り、今を懸命に生きること、そういった姿勢はどこへ行ってしまったのか。命懸けで目の前のことに立ち向かっていた人々の熱い魂はどこへ消えたのか。

 

日本語には「足るを知る」という言葉があるが、現在では悪徳とされてしまったように思う。

 

みんなが本当に足るを知ってしまったらどうなるのだろうか。
みんながクーラーの代わりに扇風機を使うようになったらどうなるだろうか。
みんなが与えられたものだけで工夫して生活してしまったらどうなるだろうか。
ローンをして新しい車に買い替えてもらえなくて困るのは誰だろう?
人々が健康になって薬が売れなくて困るのは誰だろう?

 

人の体内に菌が入れば体調を崩すように、地球も異物が増殖すれば熱を出す。そんな当たり前の道理さえも見えなくなってしまっている。

 

死があるから、生を感じることができる
苦があるから、喜びを感じることができる
不自由があるから、自由を感じることができる

 

「不条理」と向き合うことではじめて克己心が芽生え、創造性が育まれ得るのではないだろうか。

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