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「人力飛行機の為の演説草案」について

March 31, 2019

人間は服を着る唯一の動物である。
そして、人間は動物であるにもかかわらず、他の動物とは一線を画す。


私たちの祖先が己をただの「アイヌ」(人間)であると自覚し、熊や鳥と同じく生きるものとして山で暮らしていたのはもう遠い過去となった。

 

今日に至っては人間同士の間にも境界線が引かれるようになる。
職業、学歴、所属、収入、所有物・・・雁字搦めに個の重量を増していく。

 

他人との境界線を引く。

動物との境界線を引く。

自然界との境界線を引く。
挙げ句、自分の内部にも境界線を引く。

 

他者には寂しいと漏らさず、SNSの友人に充実を主張する男たち。

 

豚がかつて猪だった頃、視界は広かっただろう。死ぬまでの間、生きることで精一杯だっただろう。
ところが、猪が囚われ、その牙が抜け、その毛は抜け落ち、自分を支えられぬほど肥え、いつしか豚と呼ばれるようになり、檻の中には、生活に必要なものが溢れ、何不自由なく暮らし、目はとろんとし、自分が誰かさえも分からずにいる。

 

そのプロセスを退行していくのは相当な時間と苦痛を要するかもしれない。
けれども、その理性の現実態から解き放たれた時に、はじめて自分自身を発見するのだろう。

 

 

 

「人力飛行機の為の演説草案」
作詞:寺山修司 作曲:J.A.シーザー


おれは自分を飛ばすことばかり
熱中している一台のグライダーだった

 

麦は水の中でも育った

 

鳥が翼で重量を支えていられるのは
ある速度で空気中をすすむときに
まわりの空気が抵抗で揚力をおよぼし
それが鳥のさびしさと釣り合うからだ

 

おれはアパートの陽あたりのわるい
十一月の壁に鳥のように羽ばたいて飛ぶ
オーニソプターの設計図を記述した

 

ダンスの教習所へ通う金のない男
買い物に出かけて行って三年帰らぬ妻を待つ男
古道具屋の人命救助袋を見て帰る男
世界中に電話をかけたいと思いながら
十円玉をポケットからとり出さぬ男
黒く塗る男
橋の上から去った男
「停車場から出た汽車は自由に辿りつくことがない」
と知っている男
野良犬にミルクをやる男
洗面器の吐瀉物を線路まで捨てにゆく男
孤立した個人の内部へかぎりなく退行してゆく男
大鳥に見捨てられた男

 

おれはおれ自身の重力だった
そしておれ自身の揚力でもあった

 

おれは空っ風の駅前広場で
一メートル四方一時間国家を幻想し
ボロ靴を見つめ
同一化と分極について考えている
夏に死にそこねたセミがおれの薄汚れた背広の
左肩の翼弦にとまっている
大鳥は綱領のない革命だ
ジョン・コルトレーンにたった一度でもいいから逢いたかったよ
一メートル四方一時間国家は
やがて二メートル四方二時間国家
三メートル四方三時間国家へと拡大してゆくだろう

 

電柱も家も タンポポも 自転車修理屋も
紙屑も 日が沈むまでにはみな国家化され
ガス管のように血が地下水となり
理性の現実態としての管理と支配を見捨てて
ただはてしなく拡大しつづけるだろう
そこには日日の命令も
エイハブ船長の鯨狩りもなく
マルコ・ポーロの羅針盤も 弾薬もないだろう
外面的集団化も キルリー鳥もなく
記述されるべき歴史も 王もいないだろう

 

大鳥が撃ち落とされたとしても
その骸ではなく 軌跡を見 空の広さを見
その空を抱えこんで立ち上がり
五〇〇メートル四方五〇〇時間国家は
やがて千時間国家 万時間国家へと幻想され
政治化はさまたげられ
拡大はおれ自身の一番遠い場所である心臓にまで及び
一切の帰還を拒まれ
重力を失い 地下の塹壕を裏切って
暗い中古車フォルクスワーゲン1300のフロントガラスにうつりながら
国家の極限を飛ぶ一羽の大鳥
おれ自身を発見する

 

書きとめられる前から航空工学はあった
記憶される前から空はあった そして
飛びたいと思う前からおれは両手をひろげていたのだ
 

 

 

 

 

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